…外を見やる。もうすぐで夜が明けそうだ。部屋の隅に佇むいくつかの段ボールを見つめて、案外あっけないものだなぁと どこか他人事のように思った。明日になれば全てが元通りになってしまうのに、もうじき終わりを告げるはずの二人分の体温は、いつもと何ら変わりない。
今日が終わるまで、まだ間に合うだろうか。なぁ、伝えたいことがあったんだ。気持ちを込めてぎゅうっとヒソカの手を握ると、思いがけず強く握り返されたから驚いた。うわぁ、起きてたのか!羞恥心から身じろぎしても、ただただ苦しいくらいに抱き寄せられるだけだ。顔は見えない。泣いてるのかな。あいつに限って、そんなわけないかな。
静かに、二人分の鼓動が伝わってくる。どっくん、どっくん、どっくん。どちらの心臓もせわしなく早鐘を打っていた。
いま俺ってすごく幸せだなぁと思って、無性に泣きたい気持ちになった。
あぁもう、
時間を止める能力くらい、どっかから盗んどけばよかった。
もうなんでもいいやと思って、とりあえず目を閉じてみる。
最後まで言えずにいた一言を告げるより先に、暗い部屋を朝焼けが襲った。